白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
「私が、ドレッシング材になりますよ」
秋めいた風に夏の終わりを感じ始めた、九月上旬。
三カ月ぶりに親友の真子と食事をすることになった夕映は、真子の自宅に招かれた。
「新婚生活はどう?」
「リアルな感想言っていいの?」
「えっ、何か問題でもあるの?」
結婚して三カ月。
まだまだアツアツの新婚さんのはずなのに、真子の表情からは甘~いムードが感じられない。
「則くん、超過保護」
「え……」
「お風呂入るのも、トイレに行くのも許可みたいなのが必要なくらい、家庭内ストーカーだよ」
いや、その気は前からあったじゃない。
真子が好きすぎて、飲み会や食事会の日時や食べたメニューまで把握したくて私に連絡して来てたんだから。
クールというか、基本淡泊な性格の真子だから、少し重く感じ始めてるのかな?
「でも、則先生のその束縛感を理解して結婚したんじゃないの?」
「そうなんだけど……違うというか」
「ん?」
「実はね、今妊娠十二週に入ったとこなの」
「えっ、おめでとう!!つわりは?順調なんでしょ?今十二週なら、予定日は三月?」
「そう、三月半ば。夕映にずっと報告したかったんだけど、元彼とのこともあったから、何となく言い出し辛くて」
「そんなの、気にしなくていいのに」
「赤ちゃんは順調だよ。つわりは意外にもなくて、マタニティライフを満喫してる」
「だから余計に心配なんじゃない?そっかぁ、真子がママになるのか~」
「夕映だって、例の御曹司とはその後どうなの?」
マンションを退去する時に、新しい住所を知らせておいた。
結婚する前は、休みの日に遊びに来ることも多かったから。
引っ越し先が都内でも一等地の高級タワマン。
どう考えても隠し通せるとは思えず、引っ越しの経緯を真子にだけは話してあるのだ。