白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
*
「黒瀬先生、どうしたんですか?その格好…」
「あ、これ?三日前にTAで搬送されて来た大学生いたでしょ。彼、昨日亡くなったの」
「あぁ、白星会(大学病院)に転送した患者さんですね」
「……うん」
「本当にERの鑑ですよ」
「私は戸部先生に倣ってるだけだよ」
自分が担当した患者さんが亡くなった場合、都合がつく限り、最後の挨拶をしている夕映。
出勤前に葬儀場にお焼香しに行って来た。
喪服姿の夕映を見たERの看護師が、声をかけて来たのだ。
江南病院は重症患者の受け入れを殆どしていないため、重症と判断した場合、速やかに対応できる病院へと転送義務を負う。
全ての命を救えるわけではない。
限りある命だからこそ、とても尊い。
葬儀に参列することは、尊敬している戸部先生に倣ったもの。
キリがないことくらい夕映でも分かっている。
けれど、救えなかった命に対しての、担当した医師としての最低限の礼儀だからだ。
**
「黒瀬、悪いな。夜勤代って貰って」
「私は大丈夫ですよ。それよりも、戸部教授の手術の方が大事です」
都立医大の教授をしていた戸部医師の父親(若い頃はER医)に狭心症が見つかり、今日の午後から手術なのだ。
母親を二年前に亡くしているため、手術当日の付き添いを息子である戸部医師がしなければならない。
前日も夜勤だった夕映だが、戸部父子の役に立てるのであれば、一週間夜勤が続いてもいいと思っているくらいだ。
それほど、戸部父子を尊敬しているのだ。
「無事に終わるといいですね」
出勤して来た夕映に淹れたての珈琲を差し出し、戸部医師は無言で頷いた。
「黒瀬先生、どうしたんですか?その格好…」
「あ、これ?三日前にTAで搬送されて来た大学生いたでしょ。彼、昨日亡くなったの」
「あぁ、白星会(大学病院)に転送した患者さんですね」
「……うん」
「本当にERの鑑ですよ」
「私は戸部先生に倣ってるだけだよ」
自分が担当した患者さんが亡くなった場合、都合がつく限り、最後の挨拶をしている夕映。
出勤前に葬儀場にお焼香しに行って来た。
喪服姿の夕映を見たERの看護師が、声をかけて来たのだ。
江南病院は重症患者の受け入れを殆どしていないため、重症と判断した場合、速やかに対応できる病院へと転送義務を負う。
全ての命を救えるわけではない。
限りある命だからこそ、とても尊い。
葬儀に参列することは、尊敬している戸部先生に倣ったもの。
キリがないことくらい夕映でも分かっている。
けれど、救えなかった命に対しての、担当した医師としての最低限の礼儀だからだ。
**
「黒瀬、悪いな。夜勤代って貰って」
「私は大丈夫ですよ。それよりも、戸部教授の手術の方が大事です」
都立医大の教授をしていた戸部医師の父親(若い頃はER医)に狭心症が見つかり、今日の午後から手術なのだ。
母親を二年前に亡くしているため、手術当日の付き添いを息子である戸部医師がしなければならない。
前日も夜勤だった夕映だが、戸部父子の役に立てるのであれば、一週間夜勤が続いてもいいと思っているくらいだ。
それほど、戸部父子を尊敬しているのだ。
「無事に終わるといいですね」
出勤して来た夕映に淹れたての珈琲を差し出し、戸部医師は無言で頷いた。