白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
「おかえり」
「病院は?」
「……仕事詰めだったから、少し休みを貰ったんだ」
「そうなんですか」
「いい加減、その口調やめない?」
「へ?……つい」
夜勤勤務を終え帰宅すると、リビングで分厚い医学書を読んでいた彼。
夏季休暇を取ったばかりなのに。
仕事人間のような人が、連休を取るだなんてよほど疲れているのかな。
「その荷物、何?」
「これですか?……喪服です」
「葬儀?」
「はい。担当した患者さんが亡くなったので」
「……そういう所、俺好きだよ」
「っ…」
病棟を担当しているわけでもないし、重症の患者なんて殆ど搬送先を決める時点でうちの病院は除外される。
それでも、他の病院が受け入れ可能になるまでの間、救命処置を施すことはよくある。
ベッド数から言っても、江南病院では限界があるし、医療設備的にも大手術は殆ど受け入れていない。
だから、患者の死に関わることは比較的少ない方だけれど、無いわけではない。
午前十時を回ったところ。
夜勤明けだが、翌日は日勤になっているため、できるだけ体を休めないとならないのだが……。
「あの…」
「……ん?」
「お休みなら、デートでもしませんか?」
「ッ?!」
「デートらしいデート、してないなぁと思って」
「いいね」
私の提案に驚きつつも、彼は嬉しそうな表情を浮かべた。
「シャワー浴びて来ます」
「俺が洗ってあげようか?」
「丁重にお断りします」
「フフッ、遠慮しなくていいのに」
いつもの彼だ。
どことなく気落ちしてるように見えたんだけど、気のせいかな。