白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
(采人視点)

どうして気づかれた?
顔に出てたのだろうか?

別に隠さなければならないことでもないし、公になれば週刊誌などに載ってもおかしくない。
単なる知り合いの女という関係性なら、説明しようとは思わない。

だけど、夕映は違う。
この先、今回のようなことが起らないとは限らないし、夕映にだって言えることだ。
人の生死にかかわる仕事をしていれば…。

同じ医師という立場で、同じ方向を見据えながら共に歩んでいきたいと思わせてくれた女性。
雇われの医師でも重責なのに、大病院を背負っていく俺を支えて欲しいから。

「夕映」
「……はい?」

波打ち際に小走りに駆け出した夕映は、無邪気な顔で振り返った。
そんな彼女の元に歩み寄り、そっと手を取る。

「実は俺、今自宅謹慎処分中なんだ」
「へ?」
「少し前に執刀した患者から告訴されてて」
「それで?」
「手術は成功したし、術後の経過も良好で、リハビリも順調に進んで退院した」
「それで、何で告訴になるんですか?」
「……分からない。退院後の外来受診時のカルテにも経過良好の診断が下っている」

俺の言葉に動揺する夕映。
そんな顔をさせたいわけじゃないけれど、ずっと隠しておくのもどうかと思うし。

「病院側の判断で、事実確認が取れるまでの間、謹慎処分になった」
「確認が取れなければ、戻れないんですか?」
「それはない。結果的に俺に落ち度が無かったとしても、和解を申し出ると思う」
「……」
「全面的に認めるということではないだろうが、事を荒立てるのも良策とは言えないし」
「……誰かの恨みを買ったとかはありませんか?」
「へ?」

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