白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
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「例の件、どうなりました?」
「無事に取り下げて貰えた」
「はぁぁぁ~~、よかったです」
あの日、千葉の海で打ち明けられた衝撃的な事実を知り、彼をもっと近くで支えたいと思った。
彼はいつだって余裕のある顔をしているが、彼にだって心が折れそうになることがあるのだと知った。
そんな彼をただ見ているだけではいられなかった。
彼の推測通り、チーフ昇進を狙う同僚医師の妬みによるものだった。
外来時の診察を担当したその医師は、検査データを別の患者のものとすり替えていたのだ。
本当は脳内出血の再発(別の部位)の予兆があったにもかかわらずそれを見過ごし、経過良好と記したのだ。
検査データを改ざんし、患者を誤診したうえ、速やかな治療を受けられる権利を奪った罪。
歴とした医療犯罪行為だ。
彼への告訴は取り下げて貰えたが、改めて弁護士を通して病院側と話し合うこととなった。
彼が医療過誤をしたわけではなくても、神坂総合病院に勤務する医師がした事実は変わらない。
今回の件で、神坂総合病院は大きな痛手を被った。
けれど、患者に対する病院側の真摯な対応に、示談に向けての話し合いを受け入れてくれるだけ有難い。
「本当に感謝してる。……ありがとう」
「私は何もしてませんよ」
「俺の心の傷を覆ってくれただろ」
「そんなこと、当たり前じゃないですか」
恋人なら当然だ。
彼の苦しむ姿は見たくない。
癒すことができなくても、元々持っている治癒力を高めることくらいなら私にも手助けできる。
「私が、ドレッシング材(生体由来の体液などで湿潤環境を保持することにより、速やかに治癒に導くための医療用材料)になりますよ」
「……面白いこと言うな」
「私に癒しは求めないで下さいね?」
「例の件、どうなりました?」
「無事に取り下げて貰えた」
「はぁぁぁ~~、よかったです」
あの日、千葉の海で打ち明けられた衝撃的な事実を知り、彼をもっと近くで支えたいと思った。
彼はいつだって余裕のある顔をしているが、彼にだって心が折れそうになることがあるのだと知った。
そんな彼をただ見ているだけではいられなかった。
彼の推測通り、チーフ昇進を狙う同僚医師の妬みによるものだった。
外来時の診察を担当したその医師は、検査データを別の患者のものとすり替えていたのだ。
本当は脳内出血の再発(別の部位)の予兆があったにもかかわらずそれを見過ごし、経過良好と記したのだ。
検査データを改ざんし、患者を誤診したうえ、速やかな治療を受けられる権利を奪った罪。
歴とした医療犯罪行為だ。
彼への告訴は取り下げて貰えたが、改めて弁護士を通して病院側と話し合うこととなった。
彼が医療過誤をしたわけではなくても、神坂総合病院に勤務する医師がした事実は変わらない。
今回の件で、神坂総合病院は大きな痛手を被った。
けれど、患者に対する病院側の真摯な対応に、示談に向けての話し合いを受け入れてくれるだけ有難い。
「本当に感謝してる。……ありがとう」
「私は何もしてませんよ」
「俺の心の傷を覆ってくれただろ」
「そんなこと、当たり前じゃないですか」
恋人なら当然だ。
彼の苦しむ姿は見たくない。
癒すことができなくても、元々持っている治癒力を高めることくらいなら私にも手助けできる。
「私が、ドレッシング材(生体由来の体液などで湿潤環境を保持することにより、速やかに治癒に導くための医療用材料)になりますよ」
「……面白いこと言うな」
「私に癒しは求めないで下さいね?」