白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
「今から、叶えに行くぞ」

十二月半ば。
年の瀬を迎え、交通事故やアルコール中毒、心筋梗塞などの搬送依頼が後を絶たない。
都立江南病院では、今日も昼夜を問わず、多くの患者がER室へと運ばれて来た。

「戸部先生、先程搬送されて来た十七歳男性、虫垂が壊死しており、腸液が出かかっています」
「急性腹膜炎を起こしかけてるな。大至急オペ室の空き確認と執刀可能な医師がいるか確認して」
「了解です」

夕映はすぐさま消化器外科に内線を入れる。
十九時を回ろうとしていて、日勤の医師は帰宅している時間帯だ。
ERがある病院では、各科の医師が当直でいるのが普通かもしれないが、江南病院は大病院ではないため、必ずしも手術ができる医師がいるとは限らない。

虫垂炎であれば、ERの医師でも手術することはある。
だが、時間外(夜間)で勤務している医師は多くて二名。
患者の処置に追われている場合、直ぐにオペができるとは限らない。

幸いにも消化器外科の医師が医局にいたため、オペを依頼することができた。

「黒瀬、もう上がっていいぞ」
「……大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。今帰らなかったら、帰るタイミング逃すぞ」
「……では、お言葉に甘えて、上がらせて貰います」
「お疲れさん」
「お先に失礼します」

通常出勤の夕映は、一時間ほどの残業をし、職場を後にした。



「早かったな」
「今日の夜勤担当はスーパードクターだからね」
「戸部医師か」
「うん!」

二十時前に帰宅すると、采人さんはキッチンで料理をしていた。

「何作ってるんですか?」
「冷蔵庫にある物で、適当に作ってる」

ぐつぐつと煮込まれている音と美味しい匂い。
たちまち夕映のお腹が盛大に鳴り出した。

「シャワーしておいで」
「っっ……恥ずかしい~」

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