白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです


「年末年始も勤務だったよな」
「毎日ではないですけど、ローテで夜勤も入ってます」
「初詣くらいは行けるか」
「初詣!!」
「まさかとは思うけど、学生の時以来行ってないとか?」
「そのまさかです!地元にいた時以来、行ってないかも…」

チキンのトマト煮込みと炊き込みご飯、ふろふき大根(味噌だれは黒瀬家からの送り込み品)、お味噌汁。
実家に帰った時のようなメニューが食卓に並ぶ。
彼は本当に何でもできる人らしい。

この前も、簡単にグラタンを作ってしまった。
彼より秀でているものが何一つない。

作って貰った美味しい料理にあーだこーだと文句をつけるほど、性格が捻じ曲がっているわけじゃない。
心の中では卑屈になったりもするけれど。

「クリスマスは出勤日だっけ?」
「イブですか?それともクリスマス?」
「両方」
「二十四日は遅番で、二十五日は早番ですけど」
「じゃあ、二十五日は夕方くらいには終わる?」
「……急患がなければ、それくらいには終わると思いますけど」
「じゃあ、レストランでも予約しとくか」
「今からで間に合います?」
「俺を誰だと思ってんだよ」
「っ……」

クリスマスまで十日ほど。
こんな直前で予約が取れるだなんて。

「リクエストは?……何かある?」
「何のですか?」
「クリスマスプレゼント以外に何があるんだよ」
「……あぁ(クリスマスプレゼントね)」

去年も一昨年も仕事が忙しいという理由で将司(元彼)とは会わなかった。
だから、クリスマスプレゼントも簡単なもので済ませ、イベントらしいこともしなかった。
今思えば、本命と過ごしていたのだと分かる。

クリスマスプレゼントねぇ……。

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