白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです


「わぁ~、降って来ましたよっ」
「積もりそうか?」
「なんか積もりそうですね」
「じゃあ、TAが増えるから処置の準備でも増やしとくか」

十二月二十五日、聖なる日。
朝から底冷えするなぁと思っていたら、昼過ぎから雪が降り出した。

ER室はすりガラスになっているため外の様子が見れないが、医局の窓は普通の透明ガラス。
昼食をとるために医局に来た夕映と戸部医師は、降り出した雪を暫し眺めた。

東京に雪が降ると、大都会の交通機関は大混乱。
普段雪が積もらないため、公共交通機関に大影響を及ぼすが、ERも同じくらい大混雑する。

「今のうちにエネルギーチャージしとかなきゃな」
「はい」

病院のすぐ近くにある定食屋さんからの出前。
戸部医師は麻婆茄子定食、夕映は親子丼。
病院内の食堂でももちろん食べられるが、この時期は患者が増えるため、食堂も混雑する。
だからできるだけ出前を取ったり、出勤前に買ったりする。

「今日は早番だし、この後デートか?」
「デートというほどのものじゃないですが、お店を予約して貰ってあります」
「それをデートって言うんだよ」

丼の蓋を開けると、白い湯気が立つ。
まだ冷めてないようだ。

「先生は家でパーティーですか?」
「昨日早番だったからやったよ。予約しといたケーキとチキン取りに行かされて、嫁がちらし寿司を作ってくれた」
「いいですね~」

お父様のカテーテル手術は無事に成功し、数日で退院したそうだ。
狭心症は心筋梗塞と違い、冠動脈が狭くなり血流が不足する病。
心筋梗塞のように突然詰まり、心筋が壊死するのとは違うため、早期に計画して治療することで変わらぬ生活を送ることができる。

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