白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
「采人さんとずっと一緒にいられますように…」
「お待たせ」
「ッ?!」
目を閉じてお願い事をしていた夕映は、彼の声に気づき目を見開いた。
「車は?」
「あそこ。横付けしようと思ったんだけど、入口に二台止まってたから」
皆同じようなことを考えているのだと思う。
電車やバスは遅延しているらしく、スタッフのご家族が迎えに来ているのだろう。
通用口から二十メートルほど離れた場所にハザードランプを点灯させて停車している彼の愛車(黒いSUV)を発見。
雪が積もっていても大丈夫な車だ。
「で、今のは何だったの?」
「へ?」
「お願い事してただろ」
「っっ……」
聞かれてたのかな。
やだ、恥ずかしい。
「べ、別に何でもないですよっ」
「とりあえず、寒いから車に」
ぎゅっと繋がれた手。
とてもあったかい。
えっ、でも……、何でスーツ?
もしかして、そういうランクのお店なの?!
車に乗り込むと暖房がガンガンに付けられていて、物凄く暖かい。
「あの」
「ん?」
「スーツでなければ、ダメなお店ですか?」
「あ、これ?別にドレスコードがある店じゃないよ」
「じゃあ…」
クリスマスのディナーデート。
それだけでも場違いな気がするのに、彼の恰好を見て、焦り始める。
もっとお洒落してくれば良かった。
「それ、もしかして俺へのプレゼント?」
「え?……あ、はい」
「何だろうな~楽しみ♪」
ハンドルを握る彼が僅かに顔を向け、嬉しそうな笑みを浮かべた。
膝の上に置かれた小さな紙手提げ。
事前に買っておいた彼へのプレゼントだ。
「高価なものじゃありませんよ?」
「夕映が俺のために選んでくれたものより高価なものはないだろ」
「っっ」
照れもせずにしれっと。
もうイケメンが言うと、心臓に悪い。