白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
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「えっ、何で部屋があったかいんですか?」
「スマホで遠隔操作したから」
「……」

そういう事ができるだなんて、教わってない!
まぁ、私の家でなく、彼の家だから当たり前なのか。

マンションに着くと部屋は暖められていて、快適温度に保たれている。
彼から貰ったコートを脱ごうとして、ハッとする。

「あの、采人さん」
「ん?」

喉が渇いたのか、キッチンで水を飲んでいる彼。
カウンター越しに手にしている紙手提げをアピールする。
それを見た彼が、嬉しそうな表情で私の元へやって来た。

「メリークリスマス」
「ありがとう。開けていい?」
「大したものじゃないんですけど」

彼は紙手提げから包みを取り出し、それを丁寧に開ける。
こういうのにも人柄が出るよね。
元彼なんて、ビリビリに破く派だった。

「おっ、名刺入れ」
「先日お義母様と電話で話した時に、四月からはチーフ(主任)だとお聞きしたので」
「……ありがとな」

彼が愛用しているブランドは幾つかある。
彼がいない時に、彼の部屋を隈なくチェックしたから被ってないはず。

「先にシャワー浴びます?……んっ」

一息つこうとソファに座った、次の瞬間。
彼が覆い被さるように押し倒して来た。

「どうせ汗掻くんだし、後で入ればいいだろ」
「っっ…」
「この期に及んで、待ったは無しだぞ」
「……」
「正当な手続きを踏んで、法的に俺らは夫婦になったんだから」

彼の言う通りだ。
というよりも、今までもそれらしい雰囲気には何度もなったことがある。
けれど、キスや胸を触ることはあっても、硬直して震える私に彼はいつも我慢してくれていた。

同じベッドで寝ていても、一線を越えたことはない。
そんな彼の優しさにずっと私は甘えていた。

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