白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
(采人視点)

「痛くないか?」
「……大丈夫です」

初めてではないと聞いていたから、それなりに経験があるものと思っていたのに。
確かに処女ではないようだが、あまりにも反応が初心すぎる。

俺が悪いことでもしているのかと錯覚するくらい、彼女の表情(かお)に余裕がなくて。
それが、男心を擽るとも知らず、夕映は涙目で訴えてくる。

そんな顔されたら、我慢できるはずがない。

あのクソ男に抱かれた記憶なんて、この俺が跡形もなく消し去ってやる。
二度と思い出せないように。

「あっ、ゃと…さん?」

俺が第二ラウンドに突入したものだから、驚きを隠せないようだ。

抱いてみて分かったことは、彼女が言うようにあまり経験がないということ。
初めてのことも多かったようで、“そんなことは…”が口癖のようだ。
それがあまりにも可愛くて、ついついもっと困らせたくなってしまう。

それに、知らないといういことがこの上なく嬉しくて。
俺にも彼女の初めてを貰えるのだと思ったら、もっともっとと欲が出て来て。

初めての夜なのに、手加減するのは無理そうだ。
今夜は意識を手離すまで、俺を求めて来い。
体の隅々まで愛を注いでやるから。

眠りにつこうとする彼女の耳朶を甘噛みし、甘く囁く。

「まだ、寝かせないよ」
「んっ……」

**

俺の腕の中で眠りにつく夕映。
一度ではおさまりきらず、結局三回も抱いてしまった。

かさつく手先。
仕事柄、一日に数えきらないほど手指消毒をするからだ。

サイドテーブルの上に置いてあるハンドクリームを取り、彼女の手に優しく塗る。
俺も医者だから、手先は荒れ気味。
ハンドケアは毎日欠かせない。

この華奢な手で、沢山の命を救って来たのだろう。
そして、この先も多くの命を救う手。
これからは毎夜、俺がケアしてやるからな。

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