白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです

大病院の跡取りというスペックで判断され、俺自身には目もくれず。
優しい微笑みと紳士的な態度を示せば、誰もがフィルターをかけて俺を見る。

三次救急(重篤な救急患者に対応する医療)に指定されている神坂総合病院の外科医として、プライベートよりも仕事を優先して来た。

恋人がいなかったわけじゃない。
けれど、付き合った誰もが、俺の中身よりも完璧な外面を重視していた。

だから、結婚に対する願望もその気も無くなって。
気づけば、親の言うままに婚約していた。

祖父母は『無理に結婚しなくてもいい』と言ってくれている。
『人生を共に歩みたいと思う女性』が現れたら、婚約はいつでも解消していいと。

それが、彼女だと思った。

恋愛よりも仕事を最優先し、裏切りを突き付けられても取り乱すことなく、更には恋人の相手に対し、最善の処置をした。
何よりも、キューマスクを常時持ち歩くような医師というだけで、尊敬に値する。

救急医だからじゃない。
彼女自身が仕事を誇りに思っている証拠だ。

不規則勤務の外科医ということも理解して貰えるだろう。
だって、彼女は救急医なのだから、不規則勤務に違いない。

同じ志を持つ者。
そして、俺が目指す世界を、彼女となら築いて行けると思えたから。

失恋したばかりで、完全フリーだということが俺を後押しする。
これを逃したら、次はないだろう。

すらりとした容姿。
色白で目鼻立ちがはっきりとしていて、何より婚約者にはないものを彼女は持っている。
自立しているという大人の女性らしさと、醸し出す色香を。

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