白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
ぷくっと膨れた顔も可愛い。
キーキー金切り声を上げてるつもりだろうが、欲情を掻き立ててるだなんて思ってないだろうな。
俺との結婚を決めた時点で、俺のそばで共に医術を高め合う存在でいてくれるという彼女の気持ち。
それが何よりも嬉しくて、彼女が何よりも愛おしく思える。
「夕映の楽しみを奪う俺が憎いか?」
「……憎くはないですけど」
「けど?」
「いつもいつも意地悪すぎます。もう少し私に心の余裕をもたせて下さい。私絶対采人さんより早くに死にますよ」
「俺が助けるから心配するな」
「そういうことを言ってるんじゃないんだってばっ」
バシッと肩を叩かれた。
叩きたいなら幾らでも叩け。
だけど、お前を手放すつもりもないし、一日中そばに置いておきたい。
俺以外の男と夜を過ごさなければならないのは、この先も変わらないだろう。
例えそれが、仕事だとしても。
嫉妬で狂いそうなくらい、お前が好きなんだ。
夜間勤務なしの救急医療なんてありえないのだから、口に出さないだけで俺だって我慢してる。
「好きなものを買ってやるから」
「要りませんよ!欲しい物なら自分で買います」
「して欲しいことがあれば、幾らだってしてやるぞ?」
「甘やかして誤魔化すつもりなんでしょうけど、全部お見通しですよ」
プイっと顔を背けてしまった。
結婚して一週間。
初めての夫婦喧嘩か。
「機嫌直して貰うには、どうしたらいい?」
「別にないです!」
「そう言わずに」
意外にも、夕映はへそを曲げると意地を張るタイプらしい。
そんな新たな一面を知り、感情を擽られる。
この俺に、ご機嫌取りをさせる女がいたとはな。
ますます可愛がりたくて堪らない。
「機嫌直さないと、朝まで抱くぞ」
「なっ……んでそうなるんですか?!」
「約束しただろ。喧嘩しても同じベッドで寝るって」
「っっ……悪魔っ!!」
「何とでも言え」