白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
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彼の実家に新年のご挨拶に行って、今年一番の大事件勃発。
まだ元旦だというのに。

いつもいつも本当に突然すぎる彼。
いや、これはもはや、血筋かもしれない。

普通、自分の退職を他人から知らされるもの?
解雇ならまだしも、退職予定を他人から知らされる不愉快さ。

自分が置かれている状況から理解はできる。

けれど、彼が相談する相手はお祖父(じい)様ではなく、私じゃないの?
どう考えたって、私が間違ってるとは思えない。

この人と結婚するのが、間違ってたのかな。
そんな風に考えたくもないのに、混乱して上手く脳が働かない。


自宅マンションに辿り着いてしまった。

彼と入籍した夜。
ピロートークで彼と夫婦生活の約束事を幾つか決めた。

家事は分担制、喧嘩してもその日のうちに仲直り。
例えすれ違い生活だとしても、ベッドは同じものを使う。
それと、誕生日と結婚記念日(クリスマス)は必ず二人の時間を作る。

まさか、結婚して一週間で喧嘩するとは思ってもみなくて。
今までも意地悪されることは多々あったけれど、今日ほど苛ついた時はない。

『仕事をするな』と言われたわけじゃない。
なのに、心が定まらない。

騙されたというより、信用されてない気がして。
正直に相談して欲しかった。
年度末で退職してくれと言われたら、たぶん自己解決して納得できたと思う。

彼の心の温度と、私の心の温度が違うということが切なくて。
それがどうしても受け入れられそうにない。

下を向いたら涙が零れてしまいそう。
先に歩く彼の背中をじっと見つめて、無言で歩く。

「夕映、本当に悪かったって」

振り返った彼の顔が、涙で歪んでよく見えない。

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