白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
「泣かせたいわけじゃないのに…」
彼から貰ったコートに、零れ落ちた涙が吸い込まれていく。
彼の腕にぎゅっと抱き締められた。
「これからはちゃんと話すようにするから」
どうだろう?
人ってそう簡単に変わらないよね?
「俺だって毎週二日は我慢してるんだから」
「……え?」
「夕映が俺以外の男とオールナイトしてるだろ」
「ッ?!!!それ、仕事ですよ?」
「だとしても、嫌なものは嫌なんだよ」
「……」
呆れた。
夜勤を何だと思ってるんだろう?
ラブのラの字もないのに。
そもそも、職場で口説かれたことなんて……ないこともないけど。
私には、全くその気はないんだから。
「俺の目の届く所にいて欲しいんだよ。うちの病院なら、俺の嫁に手を出す奴なんていないからな。いたら、あの世に送ってやる」
「フフッ、医者の言うこととは思えませんね」
「あ、笑った」
「っ」
「夕映は、笑った顔が可愛いよ」
「なっ…」
「けど俺は、俺に抱かれてる時の夕映の顔が一番好きだけどな」
「っっっ」
「今日もいい?」
「ダメだって言っても聞く気ないですよね?」
「よくご存じで」
結婚して一週間だけど、夜勤で家を空けた日以外は彼に抱かれてる。
新婚だから皆そうなのかもしれないが、せめて一夜の回数を減らして貰えないだろうか?
……明日は早番なんだけど。
「ちゃんと六時間は寝かしてあげるよ」
「っ……」
人間の推奨睡眠時間が六時間。
睡眠導入剤の効能の目安が六時間。
恐らく、医師としてそれを踏まえての六時間なのだろう。
「早番だったよな?じゃあ今から逆算すると、あと二時間しかないな」
いやいや、二時間もあれば充分でしょ。