白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
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家を借りてる御礼に食事でもと思い、神坂医師にメールを入れた。
メールなのに、画面越しにあの優しそうな笑顔が思い浮かんで。
気づけば、家問題に続く、新たな火種を彼に打ち明けていた。
すると、スマホの画面に『着信中 神坂医師』という文字を捉え、通話ボタンを無意識にフリックしていた。
「あっ、もしもし」
「こんばんは。いきなりかけてすまない」
「いえ、今お電話してて大丈夫なのですか?」
「あぁ、まだ職場だけど、今医局に誰もいないから」
「そうなんですね」
スピーカー越しの美声に、思わず聴き入ってしまう。
「メールにあった、お金を取り戻したいってどういうこと?もしかして、騙し取られたの?」
「どうなんでしょう。……付き合い始めて半年くらいが経った頃から、彼が銀行勤務ということもあって、彼に勧められて『旅行貯金』みたいな感覚で、毎月彼の口座に送金してたんですよね」
「そのお金を返したくないって?」
「いえ、違うんです。返して欲しくて電話したら、繋がらないんです」
「え?」
「電話番号変えたみたいで、住んでたマンションにも行ってみたんですけど、引っ越した後でもぬけの殻で」
「完全に詐欺じゃないか」
「だから、どうするのが一番いいのか、ご相談したくて。……すみません、いつもこんな話ばかりで」
「いや、それは構わない。いつでも連絡してと言ったのは俺の方だし。ちなみに、総額でどれくらいなの?百万は超える?」
「三百万弱です」
「っ……結構多いな」
「仕事ばかりしてて、お洒落も興味ないですし、あまり贅沢もしない方なので、貯金がないわけじゃないんですけど。将来何かあった時のためをと思ったら、無性に腹が立って来まして」
「そりゃあ立って当たり前だよ」
家を借りてる御礼に食事でもと思い、神坂医師にメールを入れた。
メールなのに、画面越しにあの優しそうな笑顔が思い浮かんで。
気づけば、家問題に続く、新たな火種を彼に打ち明けていた。
すると、スマホの画面に『着信中 神坂医師』という文字を捉え、通話ボタンを無意識にフリックしていた。
「あっ、もしもし」
「こんばんは。いきなりかけてすまない」
「いえ、今お電話してて大丈夫なのですか?」
「あぁ、まだ職場だけど、今医局に誰もいないから」
「そうなんですね」
スピーカー越しの美声に、思わず聴き入ってしまう。
「メールにあった、お金を取り戻したいってどういうこと?もしかして、騙し取られたの?」
「どうなんでしょう。……付き合い始めて半年くらいが経った頃から、彼が銀行勤務ということもあって、彼に勧められて『旅行貯金』みたいな感覚で、毎月彼の口座に送金してたんですよね」
「そのお金を返したくないって?」
「いえ、違うんです。返して欲しくて電話したら、繋がらないんです」
「え?」
「電話番号変えたみたいで、住んでたマンションにも行ってみたんですけど、引っ越した後でもぬけの殻で」
「完全に詐欺じゃないか」
「だから、どうするのが一番いいのか、ご相談したくて。……すみません、いつもこんな話ばかりで」
「いや、それは構わない。いつでも連絡してと言ったのは俺の方だし。ちなみに、総額でどれくらいなの?百万は超える?」
「三百万弱です」
「っ……結構多いな」
「仕事ばかりしてて、お洒落も興味ないですし、あまり贅沢もしない方なので、貯金がないわけじゃないんですけど。将来何かあった時のためをと思ったら、無性に腹が立って来まして」
「そりゃあ立って当たり前だよ」