白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
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「遅くまで、悪かったね」
「……あの」
「ん?」
「どうして急に、……あのような席を?」
「少し歩こうか」
マンションまで送り届けて貰った夕映は、今日何故自分があの席に呼ばれたのか、普段使わないプライベート仕様の脳で必死に考えてみた。
確かに都立病院の給料は、決して多くない。
同じ勤務内容で私立病院で勤務している医師との差は数十万円にもなる。
けれど、お金では換算できない充実感があるのは確かで。
都内のER救急では腕が立つと有名な戸部医師の下で働けることは、夕映にとったら夢のような世界だ。
医大時代にボランティアで参加した災害現場で彼が施した医療技術は、神技とも思えるほど手早く綺麗で、患者への負担が最低限に保たれていた。
不安を抱える被災者の方々に寄り添い、一人ひとり丁寧に施すその医療に魅せられたのだ。
だから、『時は金なり』精神を大事にして来た。
救急専門医になったばかりの夕映は、今は吸収する時だと考えているのだ。
神坂医師と肩を並べ、目黒川沿いをゆっくりと歩く。
こうして肩を並べて歩くと、肩幅が広いことや長身だということがはっきりと分かる。
甘い声音、整った顔つき、見栄えのある容姿、誰もが羨む家柄。
同じ空気を吸っているのに、住んでいる世界が違い過ぎる。
改めて彼のハイスペックさを思い知らされた、その時。
「医療の仕事は終わりがないよね」
「……そうですね」
「医療機器がどんどん進化する中、それを扱う医師も進化が問われ、日々の治療を施しながら技術の向上も常に求められてる」
「……はい」
「だけど、俺らは生身の人間だろ」
「……?」
「プライベートも充実させたくない?」
「……できるならそうしたいですけど」
「遅くまで、悪かったね」
「……あの」
「ん?」
「どうして急に、……あのような席を?」
「少し歩こうか」
マンションまで送り届けて貰った夕映は、今日何故自分があの席に呼ばれたのか、普段使わないプライベート仕様の脳で必死に考えてみた。
確かに都立病院の給料は、決して多くない。
同じ勤務内容で私立病院で勤務している医師との差は数十万円にもなる。
けれど、お金では換算できない充実感があるのは確かで。
都内のER救急では腕が立つと有名な戸部医師の下で働けることは、夕映にとったら夢のような世界だ。
医大時代にボランティアで参加した災害現場で彼が施した医療技術は、神技とも思えるほど手早く綺麗で、患者への負担が最低限に保たれていた。
不安を抱える被災者の方々に寄り添い、一人ひとり丁寧に施すその医療に魅せられたのだ。
だから、『時は金なり』精神を大事にして来た。
救急専門医になったばかりの夕映は、今は吸収する時だと考えているのだ。
神坂医師と肩を並べ、目黒川沿いをゆっくりと歩く。
こうして肩を並べて歩くと、肩幅が広いことや長身だということがはっきりと分かる。
甘い声音、整った顔つき、見栄えのある容姿、誰もが羨む家柄。
同じ空気を吸っているのに、住んでいる世界が違い過ぎる。
改めて彼のハイスペックさを思い知らされた、その時。
「医療の仕事は終わりがないよね」
「……そうですね」
「医療機器がどんどん進化する中、それを扱う医師も進化が問われ、日々の治療を施しながら技術の向上も常に求められてる」
「……はい」
「だけど、俺らは生身の人間だろ」
「……?」
「プライベートも充実させたくない?」
「……できるならそうしたいですけど」