白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
(采人視点)
月曜日の十八時過ぎ。
「お疲れ様でした」
「術後の様子を小まめにチェックして、何かあればすぐに連絡して」
「はい」
「お疲れ様」
手術室を後にする采人。
昼前に六十代の男性が救急搬送されて来た。
その患者は吐血と酷い腹痛を伴い、検査の結果、腹部大動脈瘤破裂の初期であったため、緊急に手術が行われた。
大動脈瘤が破裂すると、病院に辿り着く前に死亡するケースが殆ど。
だが幸いにもこの患者は、瘤が破れかかった初期段階で搬送されて来たため、九死に一生を得た。
最新の医療機器で石化した箇所も見つかり、同時に処置が行われたのだ。
八時間にも及ぶ手術を終え、采人は医局へと戻る。
「珍しいな」
医局のデスクに置きっぱなしのスマホに不在着信があるのに気づく。
『黒瀬 夕映』という表示を目にし、無意識に頬が緩み出した。
発信ボタンを押し、スマホを耳に翳す。
「はい、もしもし?」
「あ、神坂です。電話貰ったみたいだけど」
「……まだお仕事中ですよね?」
「ん~、あと十分くらいすれば上がれるけど、何かあった?」
「……ご飯でもどうかと思いまして」
「え?……あぁ、もちろん、いいよ」
采人は一瞬固まってしまった。
夕映から夕食の誘いを受けるとは思いもしなくて。
つい先日、プロポーズ的な話をしたからだろうか?
いや、彼女はそんな女性じゃない。
むしろ、俺の言葉に警戒して、距離を取りたがるような性格だ。
だとすると、何か相談事でもあるのだろうか?
紹介した弁護士からは、相手の男とは示談が成立したと聞いている。
送金していたお金は分割で返済することになっている他、慰謝料のような和解金を支払って貰う形になったと。
他に思い当たる節がない。
「では、十分後くらいに正面入口の所で」
「……へ?」
月曜日の十八時過ぎ。
「お疲れ様でした」
「術後の様子を小まめにチェックして、何かあればすぐに連絡して」
「はい」
「お疲れ様」
手術室を後にする采人。
昼前に六十代の男性が救急搬送されて来た。
その患者は吐血と酷い腹痛を伴い、検査の結果、腹部大動脈瘤破裂の初期であったため、緊急に手術が行われた。
大動脈瘤が破裂すると、病院に辿り着く前に死亡するケースが殆ど。
だが幸いにもこの患者は、瘤が破れかかった初期段階で搬送されて来たため、九死に一生を得た。
最新の医療機器で石化した箇所も見つかり、同時に処置が行われたのだ。
八時間にも及ぶ手術を終え、采人は医局へと戻る。
「珍しいな」
医局のデスクに置きっぱなしのスマホに不在着信があるのに気づく。
『黒瀬 夕映』という表示を目にし、無意識に頬が緩み出した。
発信ボタンを押し、スマホを耳に翳す。
「はい、もしもし?」
「あ、神坂です。電話貰ったみたいだけど」
「……まだお仕事中ですよね?」
「ん~、あと十分くらいすれば上がれるけど、何かあった?」
「……ご飯でもどうかと思いまして」
「え?……あぁ、もちろん、いいよ」
采人は一瞬固まってしまった。
夕映から夕食の誘いを受けるとは思いもしなくて。
つい先日、プロポーズ的な話をしたからだろうか?
いや、彼女はそんな女性じゃない。
むしろ、俺の言葉に警戒して、距離を取りたがるような性格だ。
だとすると、何か相談事でもあるのだろうか?
紹介した弁護士からは、相手の男とは示談が成立したと聞いている。
送金していたお金は分割で返済することになっている他、慰謝料のような和解金を支払って貰う形になったと。
他に思い当たる節がない。
「では、十分後くらいに正面入口の所で」
「……へ?」