白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
「後はサラダを作るだけなので、もうすぐ出来上がりますよ」
「……」
無言なのが恐ろしい。
引っ越す意向を伝えただけなのに、そんなにも怒ることなの?
もしかして、本当に本気で私と結婚したいってこと?
えっ、そうなの?
冗談だとは思ってないけど、お金に困ることのない根っからのセレブだから、マンションをポンと明け渡すのと同じように、指輪もポンと買ったのだと思っていた。
そりゃあ、普通に考えてポンと買える額じゃないのは分かっている。
自分だったら数か月は悩みに悩んでいそうだもの。
今年三十四歳で十七歳の婚約者。
リアル問題絶対ありえないとは言い切れないが、余程のことがない限り、出会う事すらないような歳の差だ。
だから単に、現実的に結婚したいのだと思っていた。
相手は自分の歳に近い世代の女性が好ましいという概念だ。
状況的に医師として、知人として、同世代という枠組でしか捉えていなかったが。
もしかしたら、真剣に私と結婚したいと思ってくれているということ?
味噌を溶き終えた夕映は、冷凍かぼちゃを取り出し、それをボールに入れラップをかける。
そして、それをレンジにかけた。
生姜焼き、かぼちゃのサラダ、なめこの味噌汁、オクラの和え物。
かぼちゃもオクラも冷凍野菜を使用し、手抜き料理満載だが、出来てしまえば結構見栄えのある副菜になる。
医大時代から一人暮らしをして、約十年間で培った時短料理だ。
作り終えた料理を盛り付け、それをダイニングに運ぶ。
相変わらず不機嫌オーラ全開の彼は、行き来する夕映をじっと見据えている。
「出来ましたよ……?」