白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
酔い潰れた夕映を迎えに行き、マンションへと向かう采人。
助手席で寝ている夕映を見据え、溜息が漏れ出す。
「ったく、無防備にも程がある」
膝下丈のワンピース。
八月上旬だから半袖なのは仕方ないにしても、軽く上に羽織るものがあってもいいのに。
アシンメトリーのスカートの裾から覗く脚線美が采人の視線を奪う。
自分も医学科(医師を養成する六年制の学科)を卒業しているから分かる。
看護学科や保健学科は女子が多いが、医学科は圧倒的に男子が多い。
赤石医師があの場にいたという事は、恐らく医学部時代の友人の結婚式か何かだったのだろう。
医師が纏う独特の雰囲気というか、医学部出身という面構えに見慣れている采人だから分かったというのもある。
パーティー仕様のパンツスーツを何着か買い与えねば気が済まない。
采人はキリリと奥歯を噛みしめ、家路を急いだ。
*
マンションの地下駐車場に到着し、自宅へと夕映を運んでいると、彼女が目を覚ました。
けれど、ヒールを脱いでいることもあり、そのまま無言で運ぶ。
状況が呑み込めないのか、彼女も黙ったまま。
謝るわけでもなく、礼を言うでもなく。
強いて言うなら、『何で、あなたに運ばれてるの?』的な顔をしている。
普段はマスカラなんてつけないのに。
結婚式だからなのか、メイクもバッチリきまっていて、いつもより色気が倍増しになっている。
髪だって上品に巻かれていて、同期の男の前ではこういう恰好をしていたのかと思うと腹立たしくて。
ベッドに乱雑に下ろし、彼女の自由を奪う。
―――女の顔をするのは、俺の前だけでいい。