白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
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「痛っ……んっ…」

喉が渇いて目を覚ました夕映は、鈍器で殴られたような激しい頭痛に襲われた。

そう言えば、昨日は夜勤明けの状態で着替えに自宅に帰り、同期会(医学部時代の同級生グループ)のメンバーで注文しておいた結婚祝いを受け取りに行って、その足で結婚式に出席したんだった。

多重玉突き事故による複数の重傷患者の処置と、退勤直前の火傷の急患。
目まぐるしい夜間勤務で肉体的にヘロヘロ状態のうえ、同期の結婚式という精神的苦痛。
結婚式当日が夜勤明けだから欠席にしようと思っていたのに、まさかの二次会幹事を引き当ててしまい、欠席することができなかったのだ。

そして、場を盛り上げようと、親しくもない同期のメンバーと酒を酌み交わした結果、見事に二日酔い。
普段からあまり飲酒しない夕映にとって、二日酔いは一年に一度あるかないか。
それだけに、頭痛持ちでもない夕映の頭は、恐ろしい激痛に襲われていた。

重い体を捻り、キッチンへと水を飲みに行こうとした、次の瞬間。
夕映の視界に衝撃的な光景が飛び込んで来た。

「………え?」

これは夢?
ありえない状況に、再びズキンと鈍痛が脳を襲う。

ベッドに横たわる神坂医師。
しかも、なぜか服を着ていない。
怖くて掛け布団が捲れないが、もしかしたら下も裸なのだろうか?

二日酔いで鈍い思考の中、必死に昨夜の出来事を思い出してみる。
―――二次会のバーで酔っ払って……。
その後、どうしたんだっけ?

記憶にない。
どうやって家に帰って来たのかも覚えてないのに、なぜ彼とこんなことになっているのだろうか?

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