白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです

「噛みたいなら噛めばいい」
「へ?」
「それも俺に対する愛情なら、幾らだって受け入れるよ」
「っっ……」

この人、どうかしてるんじゃないの?
もしかして、そういうのもアリな人なの?
無理ムリむり!
私はそっちの世界には絶対いけない!

「何、その目」
「……」
「言っとくけど、俺も別にその()があるとかじゃないぞ」
「へ?」
「別に好きなわけじゃないが、噛みたいなら好きなだけ噛ませてやるという意味で、噛んで欲しいというわけじゃない」
「……はぁ」

良かったぁ。
知りたくもない世界に引きずり込まれるんじゃないかと焦ってしまった。

「フフッ」
「……何ですか?」
「いや、何でもない」
「……何か、おかしいですか?」

口元を手で押さえ、必死に笑いを堪え始めた。
早とちりした私が悪いけど、あの言い方じゃ、誰でも勘違いするのに。

「おかしいというより、分かってないな~と思って」
「………何を?」
「今置かれている状況を」
「………っ」

布団で大事な部分を隠しているとはいえ、完全に『一夜を共にしました』状態。
本当にしたのか、してないのかは未だに定かではないが、どう考えても緊急事態なのに変わりはない。

「目瞑ってて貰えますか?」
「何で?」
「何でって、恥ずかしいからに決まってるじゃないですか」
「昨日、散々見せ合ったのに?」
「っっ…」
「それに、噛む噛まないじゃなくて、俺とこういう状況に至ること自体はNGじゃないんだ?」
「……っんッ」

彼の言葉でハッとした時には、時すでに遅し。
昨夜と同じように彼に組み敷かれてしまった。

「 いい加減、認めたらどうだ?」
「なっ……にを?」
「俺の女になることを」
「っ…」

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