白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
「これとこれなら、どっちがいい?」
「……どっちでもいいと思います」
ダークグレーの物と、ブラック地に僅かに織りのような細かな模様が入っているボクサーパンツを夕映の目の前に翳す采人。
完全に夕映に選ばそうとしている。
会計の際に呼んでくれるだけでいいのに…。
数時間前の下着姿が脳裏にチラつき、夕映は平静を装うので手一杯。
まともに采人の顔を見ることができずにいる。
「夕映」
「……」
「夕映」
「……はい」
「夕映っ」
「はいっ」
仕方なく視線を持ち上げると、スッと耳元に顔を寄せた采人。
「ちゃんと選ばないと、次は夕映の下着買いに行くよ?」
「なっ…」
悪魔だ。
優しい微笑みを顔に張り付けた悪魔。
いちゃついていると思われているのか。
いや、違う。
みんなの視線は彼に釘付けだ。
彼の顔は国宝級だから、無意識にうっとり見惚れてしまうのよね。
「こっちのがいいと思います」
「黒い方ね」
にこっとした笑顔も反則だけど、色気のある声音も相当な破壊力がある。
羨ましそうに視線を送る女性たちに、優越感を感じないはずがない。
こんな極上の男を連れ歩いていたら、私のスペックまで底上げされた気分になる。
他人様の男だけれど。
「靴も見ていい?」
「……はい」
すっかり彼のペースだ。
まぁ、最初から今日一日は彼に付き合う約束だから仕方ないか。
男性下着専門店を後にし、次に訪れたのは靴屋。
サマーモデルのスニーカーを始め、様々なブランドのサンダルが店頭に並ぶ。
「履き心地どう?」
「これ、結構いいですね」
「だよな」