白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです


「沢山買って貰ってすみません」
「別に大した額じゃないよ」

あなたにとってはそうかもしれないが、私にしたら結構な額です。

それに何故か、お揃いのサンダル。
ペアコーデが好きな人なのかな?

買い物の途中から手を握り始めたし、話しかける時は結構な至近距離で話して来る有り様で。
その度にいちいちドキッとさせられる。

昨夜のキスと今朝のやり取りもあるから、不要に意識してしまった。
それに、下着姿だけじゃない。
真っ裸だって見られている、彼には。

「晩御飯、何食べたい?」
「……何でも大丈夫です」

会話一つとっても、恋人同士としか思えない内容だ。

「昼が洋食だったから、夜は和食がいいよね」
「……そうですね」

食べれるものなら何でもいい。
できることなら、このまま家に帰ってお開きにして欲しいくらいだが、どうせ家に帰っても彼はすぐには帰らなそうだ。

「あっ、もしもし、開店前のお忙しい時間にすみません、神坂です」

ショッピングモールの駐車場内を歩きながら、彼は行きつけの店に電話し始めた。

元彼と比べてはダメなことくらい分かってるけれど。
こういうスマートなところは、本当に魅力的だ。
元彼はマメな人ではなかったから、記念日とかでない限り、店に予約するなどということは皆無に等しかった。

私が不規則勤務というのもあったからかもしれない。
いつもデリバリーを頼んだり、近くのお店で出来合いの物を買って来るのが定番だった。

「京懐石の店にしたんだけど、いい?」
「…はい」

いいも何も、もう予約済みじゃないですか。
ファストフード店でドライブスルーして帰宅しても構わないのに。
彼にはファストフードという概念はないかも。

車に乗り込んだ二人はシートベルトを装着し、モールを後にした。

< 97 / 172 >

この作品をシェア

pagetop