狼君の甘噛み溺愛
コンコンコン...
「し、失礼します...」
保健室の扉を開けると保健室の独特なほんのり甘い香りがした。
そしてテーブルの椅子に座って勉強している男の子
(…さっきの生徒代表の人...!!)
(良かった...人居て...)
「…あの──すみませ...」
「...お前、誰?保健委員じゃないよね?」
「で、何?用件は?」
「用がないならさっさと帰って。遊び場じゃないからここ。」
(え...?別人?入学式時とは全っ然違う態度なんだけど...!?)
「あ、あの絆創膏欲しくって....絆創膏ありますか...?」
「はぁ?絆創膏?」
「えと...あの、右の指の人差し指のとこ紙で切っちゃって...」
男の子は入口付近にいる私の切った人差し指を見て
少し硬直した。
「あ、あの……どうかしましたか...?...絆創膏...ありますかね...?」
そう言うと男の子は今までに無いほど、柔らかい眼差しで口を開いた。
「ごめん、少しこっち来てくれる?もう少し見て判断するから。」
「は、はい......?」
(……?また態度が変わったと思えば今度は優しくなるし何だこの人、?多重人格者……?)
そして私は男の子に近づき指をまじまじと見て口を開いた。
「……ふーん、なるほどね。」
(えっ……嘘...まさかだけど私がヤギの血混ざってるのバレるなんてことないよね...?)
(普通の人じゃ気づかないし……。大丈夫だよね……。)
保健室が自分の心音で響く。
廊下から聞こえる微かな話し声や笑い声が恋しい。
「あ、あの……どうか...しました、か、?」
「…はぁー...」
「これは奥まで傷が行っちゃってるね...。一旦洗おう。」
その言葉を聞いて私は安堵した。
「は、はい...お願いします...。」
そして私は保健室の水道のところで男の子に指を洗われている。
まだ心音が響いているのはきっと、さっきの出来事が忘れられないからだ。
きっとそうだ。
そうして洗い終わった時には血が止まったかと思ったけど気のせいだった。
指先は水に滲んだ血が広がっている。
「ちょっとそこのベッドに座ってて。絆創膏探すから。」
そして男の子が絆創膏を見つけて、ベッド前に椅子を置いてご丁寧にはみ出さないよう、私の指へと絆創膏を貼った。
「よし、これで良いかな。」
「あ、ありがとうございます……!」
(はぁ...心臓に悪い...。さっさとここから退散して教室に戻ろう...。)
そう思い、私は勢い良く立ち上がった。
「...そっそれではっっ!」
そして私は逃げるように立ち去った。
はずだった。
「待てよ。逃げるな」
後ろから腕を掴まれ、強引にベットに押し倒された。
「……へ!?あのっ!?!?」
無理やり握力でどうにかしようと思ったけど男の子の握力の方が圧倒的に強いのは当然だった。
「抵抗しても無駄だよ。」
「.....お前、狼じゃないよな?」
(……!!なんでバレたんだ...!?とりあえず今は誤魔化さなくちゃ...!)
「……な、何言ってるんですか、この学園は狼以外禁制の学園ですよ。」
「私が狼じゃないなんて有り得ませんよ。」
「ふーんじゃあ血液検査受けて診断書見せてよ。そしたら信じるよ。」
「……!個人情報なので...無理です。」
「じゃあこの事学園側に知らせていいんだね?そうしたら君は即退学になっちゃうけど。」
(や、やばいどうしよう...何か打開策は...)
(……そうだ、あともう少しだよね...。)
時計の針が遅くなったように感じる。
(早く時間になれ...!)
キーンコーンカーンコーン……
そうして私は時間になった途端、足を使って男の子を蹴って無理やり保健室を飛び出した。
「...しっ失礼しました……!!」
バタバタ...
「痛った......チッ..女子なのに蹴るとかどうかしてるだろ......って何だこれ。」