私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「失礼します」
女性の声が割って入った。
美人だ、と一鈴は彼女を見た。
爽やかなショートカットに、まっすぐ知的な眉、大きな瞳、ぷるんとした唇。紺色のスーツが似合っていた。足は細くて、高さのあるヒールが彼女の女性らしさを際立てている。
「この書類、先方が急ぎでここを確認したいとおっしゃって」
「これなら」
短くやりとりしたのち、彼女は一鈴を見て微笑した。
それだけで、悟った。
彼女もまた穂希に恋している。
女性としての勝利を確信した笑みだ。
だけど、と思う。
あなたも私と一緒で失恋は確定だからね。
「どうした?」
「一人だけ女性なんですね」
穂希はちょいちょいと一鈴を手で呼ぶ。その耳に手をあて、小声で言う。
「部下は男性に限定していたが、彼女の名前が野々田敬都で、間違えて最近配属になったんだ」
「へえ」
「なにもないといいんだが」
「ないですよ」
だから、穂希が好きな女性を選び、結ばれればいい。それは自分ではないけれど。
「帰りますね」
「もう昼だ、一緒に食事でも」
「運転手さんが下で待ってるんで」
返事を待たず、一鈴は歩き出した。
穂希にささやかれた耳が熱くて、そっと手を当てた。
***
まったく一鈴さんはマイペースだ。
穂希はパソコンの画面を見ながら思い出す。
男友達の話を参考にドライブに行った。
女性は高級車に喜ぶと聞いたが、ただドン引きされた。
そこらのレストランは嫌がられると聞いたが、道の駅のレストランで喜んでいた。
景色が見られなくても笑っていた。
穂希は軽く首をふった。
今は仕事だ。
画面に集中し、雑念を追い払った。
女性の声が割って入った。
美人だ、と一鈴は彼女を見た。
爽やかなショートカットに、まっすぐ知的な眉、大きな瞳、ぷるんとした唇。紺色のスーツが似合っていた。足は細くて、高さのあるヒールが彼女の女性らしさを際立てている。
「この書類、先方が急ぎでここを確認したいとおっしゃって」
「これなら」
短くやりとりしたのち、彼女は一鈴を見て微笑した。
それだけで、悟った。
彼女もまた穂希に恋している。
女性としての勝利を確信した笑みだ。
だけど、と思う。
あなたも私と一緒で失恋は確定だからね。
「どうした?」
「一人だけ女性なんですね」
穂希はちょいちょいと一鈴を手で呼ぶ。その耳に手をあて、小声で言う。
「部下は男性に限定していたが、彼女の名前が野々田敬都で、間違えて最近配属になったんだ」
「へえ」
「なにもないといいんだが」
「ないですよ」
だから、穂希が好きな女性を選び、結ばれればいい。それは自分ではないけれど。
「帰りますね」
「もう昼だ、一緒に食事でも」
「運転手さんが下で待ってるんで」
返事を待たず、一鈴は歩き出した。
穂希にささやかれた耳が熱くて、そっと手を当てた。
***
まったく一鈴さんはマイペースだ。
穂希はパソコンの画面を見ながら思い出す。
男友達の話を参考にドライブに行った。
女性は高級車に喜ぶと聞いたが、ただドン引きされた。
そこらのレストランは嫌がられると聞いたが、道の駅のレストランで喜んでいた。
景色が見られなくても笑っていた。
穂希は軽く首をふった。
今は仕事だ。
画面に集中し、雑念を追い払った。