私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~

「どう考えても人間がやったんですよ!」
「落ち着け」
「あなたはなんで落ち着いてるんですか!」

 ドアががらっと開いて、ナースが現れた。
「騒ぐなら帰ってください。許可があっても、騒ぐなら別です」
「一鈴さん、行こう」
「でも」
 一鈴は涙目でコスモを振り返る。
「俺たちにできることはない。お医者さまとコスモさんを信じよう」

 一鈴はうつむいた。
 喉になにかがつまってしまったようで、ただ涙があふれる。が、こぼれないようにこらえた。
きっと大丈夫。だから涙はそのときまでとっておく。
 穂希に肩を抱くようにして促され、一鈴は歩き出した。



 穂希とともに宝来家に帰宅すると、時任にリビングに連れて行かれた。
 そこには恭子が待ち構えていた。
「出て行きなさい」
 一鈴を見るなり、彼女は言った。
「一方的すぎる」
 穂希が反論する。

「コスモさんは重傷を負ったのよ!」
「彼女は関係ない」
 穂希が一鈴をかばう。
「コスモさんのご両親になんて説明したらいいか」
「一人で外出中のことだ」
「そんな言い訳はきかないわ。三人よ、三人も!」
 恭子はぴしゃりと言う。

「一鈴さん。穂希が部屋を片付けて、前より明るくなって、それは感謝しています。だけど、以前の呪いは人の命を奪うほどではなかったの。あなたが来てからだわ」
「コスモさんは生きてます!」
 一鈴は反論した。
「母さん」
 とがめるように穂希が声をかける。
「非科学的なのはわかっているわ。でも、一鈴さんも危ないのではなくて?」
 一鈴は目を見開いて恭子を見た。
「あなたを心配しているわけじゃないわ」
 恭子は無表情だった。
 彼女の怒りを表しているようで、一鈴はうつむいた。
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