私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「俺と父の馬は青毛で母のは葦毛、コスモさんのは栗毛」
 二頭の馬は真っ黒で、一頭は白にグレーのまだら模様があった。コスモの馬は茶色で、鼻に白い筋が入っていた。
「彼女の馬の名前はミーティア。意味は流星」
「筋が流星みたいだから?」
「聞いたことはないな。彼女が目覚めたら聞いてみるか」
 一鈴はコスモを思い出し、なんとも言えない気持ちになった。

「まずはボロをだすぞ」
 穂希がことさらに明るい声を出した。
「ボロって?」
「馬のフンだ」
 大きなフォークのような道具を渡され、マスクと防塵メガネも渡された。
 厩務員は穂希に言われて馬を連れ出した。
 空になった馬房は細かく切られた藁と馬のフンが散乱している。
「大変そう」
 一鈴は顔をしかめた。



 掃除を終えて、一鈴はぐったりした。
 穂希によるとよその馬房ではおがくずを使っているらしいが、ここは短く切った藁を使っていた。藁のほうが病気になりにくいらしい。
 ぼろをとり除き、藁を乾燥させるために日なたへ運んだ。乾燥には数日かかるそうで、減らした分を補充しなくてはならなかった。
 結局、全部の馬房を掃除させられた。もちろん穂希も一緒だ。

 服のあちこちに藁がついて、払っても払っても出て来た。眼鏡がなかったら埃が目に入って痛かっただろうし、マスクがなかったらくしゃみを連発していそうだ。穂希は防具なしでも平気そうなのが不思議だ。
 マスクと眼鏡をとると、穂希がくすっと笑った。

「あとがついてるぞ」
「見ないでくださいよ」
 一鈴は不機嫌に顔をそむけた。
「かわいいよ」
「性格わるっ」
「好きな掃除ができてうれしいだろう」
 穂希はくすくすと笑った。
「好きじゃないです。気分転換にいいって思ってるだけで」
「そうなのか」
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