私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「お母様は呪いを受けたことは?」
「ないな。姉もない」
「女性限定にしては不自然ですね。……多美子さんは?」
 どきどきしながら聞くと、ないな、と穂希は言った。

「そういえば、歳の離れた女性の被害は聞かないな」
「年の近い女性ばかり?」
「そうだ。子供の頃は男でも俺を悪く言うとなにかが起きていたが、やはり同年代だ」
「穂希さんを恨む人に心当たりは?」
「多過ぎる。俺は昔から優秀で妬まれた」
「自分で言いますか」
「仕方ない、事実なんだから」

「その中で攻撃に出そうな人はいますか?」
「調べさせたが、疑わしい人物はいない。野々田とコスモさんは外だが、莉衣沙さんと爽歌は邸内だ。すべてに関与しているのか別々の犯人なのかもわからない。人を雇ったと仮定すると容疑者を絞り切れない。彼女たちを恨んでる人まで調べると、そうとう時間がかかるぞ」

「爽歌さんは恨みをかいそうに見えませんけど」
「美人で優しくてモテるから、女性からやっかみをうけるんだ。ふられた男の逆恨みもある」
「ああ、そうか、そうですね」
「君は人へのやっかみがないみたいだな」
「妬んでも得はないですからね」
 外を見ると、穂希の馬とコスモの馬が、お互いの背に首をまわして仲良くグルーミングしていた。
 もやっとした。やっかみがないというより、今までその暇がなかった気がしてきた。

「君を守るためには、家に帰したほうがいいんだろうな」
 顔を戻すと、寂しそうに微笑する穂希が見えた。
「俺の結婚がらみなら、君が襲われないのは犯人の汚名を着せたほうが婚約破棄にもっていきやすいからだろう。被害者になると同情票が入るからな」
「そういう判断ができるのに、呪いとか言うんですね」
「君の鏡のおかげでだいぶ跳ね返せているが」
 穂希はペンダントを取り出して一鈴に見せた。
「思い込みの効果ですって」
「いいことは信じればいいんだろう?」
 穂希は微笑を浮かべたままだ。
 一鈴はきゅっと唇を結んだ。
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