私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 最初、呪いの思い込みを解いて五千万を貰い、穂希は爽歌と結ばれてハッピーエンド、なんて楽観していた。いかに浅はかな展望だったことか。
「五千万円もらえるなら、すぐに契約解除でもいいですよ」
 へらっと一鈴は笑った。

「……本当は、ここに残ってもらいたい」
 そんなの、まるで好きな人に言うみたいじゃないか。
「私はお守りじゃありません」
 彼はお守りとしてそばに置きたいだけだ。あんな期待させるような言い方、ずるい。本当に無神経だ。わかってる、彼が女心をわかってないことなんて。
「わかっている。最初に言った一カ月、あと一週間はいてくれるか」
「わかりました」
 へらへらと笑って一鈴は答えた。



 住まいに戻った一鈴は、心配した玉江に出迎えられた。
「穂希様とご一緒でなにもなかったですか?」
「大丈夫ですよ」
 一鈴が笑うと、玉江はほっと息をついた。

「爽歌様からお茶会のお誘いがきてます。お寂しいでしょうね。ご令嬢がたがいなくなって」
「そうですね」
 爽歌の気持ちまで思いやる余裕がなかった。
 実際に襲われているのだ。どれほど怖いだろう。それでも残るほど穂希を想っているのだ。

 主に女にだけ発動する呪い。かつては彼に悪意を持った男性も呪われたという。
 まるで彼を守っているみたい。
 思ってから、ひっかかる。
 年の近い女性ばかりが呪われたという。
「守る……というより」
 まるで女ができてほしくないような。
 恭子の顔が浮かんだ。
 彼女には呪いが発動しなかったという。
「まさか、そんな」
 一鈴は思わず手で口を覆った。
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