私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 息子を溺愛する母親の話はときおり耳にする。
 息子のデートについてきたり、交際相手に別れろと迫ったり。
 ネットで見るだけで実際に目にしたことはない。自分の母親は仕事が忙しくて息子のことは放置気味だ。
 弟の面倒を見て来たのは一鈴だ。もし弟に恋人ができたら、嫉妬せずにいられないだろう。

 恭子のみならず、姉の二人にも呪いは及んでいないという。二人は海外だと聞いていたが、連絡なく帰国していたら気が付かないだろう。そしてこっそり屋敷にいたとしたら。
 恭子や姉たちなら多美子をはじめ、メイドをコントロールできそうだ。
 穂希は多美子をもう一人の母だと思っている、と言っていた。
 彼女もまた、息子のように思っているのだとしたら。
 恭子とともに、彼にふさわしくない女を排除しているのだとしたら。

「そんな、こと」
 まだ可能性だけの段階だ。妄想と言っていい。
 絶対に穂希に気付かれないようにしないと。
「一鈴様?」
 心配そうな声に、一鈴ははっとした。
「なんだっけ」
「お茶会のお返事、いかがなさいますか?」
「行きます。いつですか?」
「明日の午後です」
「わかりました」
 一鈴は答え、寝室に向かった。
 自分の思い付きが間違っていればいいと、心の底から思った。



「一鈴さんはお茶会にいらっしゃるそうです」
「ありがとう」
 メイドが退室すると、爽歌はサイドテーブルの引き出しをあける。
 穂希の写真を手にとり、彼の唇をそっとなぞる。
「穂希さんはあの人が好きなの?」
 彼はただ笑うだけで、返事はない。
 爽歌は写真を胸に抱きしめた。
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