私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「一鈴さんは気になりませんの?」
「呪いなんて気のせいです」
「お強いですのね」
 爽歌は感心して、ケーキにフォークを刺した。
「何かしら」
 不思議そうに言い、爽歌はフォークを動かす。ケーキをすくいあげると、残された側から鋭い針が現れた。
 呆然とした爽歌は、次に、一鈴を見た。

「私じゃない!」
 一鈴は立ち上がった。
「そ、そうですわよね」
 爽歌は、だけど怯えたようにフォークを皿に戻す。その手は震えていた。
「いかがなさいましたか」
 多美子の声がした。
 一鈴は青ざめた。この状況、また疑われる。いや、むしろ多美子がケーキに針を?
「いえ」
 爽歌は隠すように皿を遠ざけた。
「お見せください」
 多美子は爽歌の皿を手にとり、異物を確認して目を細めた。

「申し訳ございません。私の管理不足でございます」
「そんなわけない!」
 一鈴は多美子をきっと見すえた。
「誰かがやったのよ!」
「誰か、とは」
 多美子の冷たい声と目に、一鈴はたじろぐ。なんの証拠もないから言えない。
「騒ぎばかりお起こしになって、若様にはそのような方は不釣り合いです」
 メイドたちが一鈴を見て小声でささやき合う。

「ごめんなさい、私、気分が」
 爽歌は口を押さえて弱々しく言った。
「部屋にお連れしてください」
 多美子が言うと、二人のメイドが爽歌を支えて連れて行った。
「一鈴様もお戻りください」
「それ、調べさせてください」
「あなたになにがわかるのですか?」
 一鈴は答えられない。

 自分は素人だ。警察みたいな捜査の専門家でもなければ、科捜研みたいに科学でなにかを証明する技術も道具もない。 一鈴はしぶしぶひきさがった。
 玉江は予想外に早く戻って来た一鈴に驚いたが、彼女が沈んでいるのを見てなにもいわずに自室にひっこんだ。
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