私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 本邸の豪華なリビングは時間が止まったかのようだった。
 最初に金縛りが溶けたのは一鈴だった。
「あはははは!」
 唐突な笑い声が響く。全員がぎょっとした。
「冗談、面白いですね!」
 急に時間が動き出し、人々は顔を見合わせた。

「続いて本命の発表です! どうぞ!」
 一鈴が手をマイクの形にして穂希に向ける。
「冗談ではありません」
 一鈴の顔がひきつった。
 なんてこと言うんだ、バカ御曹司!
 これ、クビ切られるんじゃ。
 多美子を見た。が、彼女は無表情だった。

「どういうことですか」
「大変な侮辱ですよ」
 父親たちが静かに怒る。 
「どういうつもりだ」
 滉一が厳しく穂希にたずねる。妻の恭子は驚きすぎて声もないようだった。

「一目惚れしました。ちゃんとこの中から選びましたよ」
 穂希は皮肉に笑う。
 いやいやいや、ないわ!
 反論したいが、声が出ない。

 莉衣沙がわーっと泣き出した。
「息子の心が決まっていなかったようです。また改めて」
 滉一が言い、四家が立ち上がり、出て行く。
「だからこんな男はやめろと言ったんだ」
 爽歌の父は掌中の珠を慈しむように娘とともに出て行った。

 滉一ににらまれ、一鈴は身をすくめた。
「嘘でしょう、穂希さん」
 恭子がすがるように言う。
「こちらに」
 穂希は一鈴の手をとり、歩き出す。
「話は終わってないぞ!」
「また後で」
 穂希は振り返りもせず、一鈴を連れ出した。

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