私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~



 翌日、一鈴は荷物をまとめてリビングで迎えを待っていた。
 玉江は謹慎させられていると聞いていた。
 なんかおかしいと思ったんだよね。
 一鈴はため息をついた。
 玉江は妙に噂話に詳しく、不快な話をいちいち耳に入れて来た。あれらは一鈴が出て行くように仕向けていたのだろう。
 車の音が聞こえて、一鈴は家を出た。
 迎えの車には穂希が乗っていた。
 運転手が降りて後部座席のドアを開ける。
 穂希は玄関で立ちすくむ一鈴の前に立つ。

「お仕事は」
「午後からにした」
「重役出勤ですね!」
 一鈴はへらっと笑った。
「本当にこれでいいのか」
「あるべき場所に帰るだけです」
 帰ることは昨夜のうちに実家に連絡した。
「陽太に……一番上の弟に、やっぱりメイドなんて無理だったんだって言われました。真ん中の弟は冷めてるんですけど、妹は大喜びしてくれて。お父さんは忙しいのか既読スルーなんですけど、お母さんはケーキ買ってくれるって」
 ケーキに針が入っていた事件で追い出されるなんて知りもしないから。

「俺が君の無実を証明する」
「無理ですよ」
「今度はメイドが『自首』してきた。話を聞けばなにかわかるだろう」
「もういいんです」
 恭子はまるで誘導するように一鈴を脅迫犯と断定し、玉江をかばった。
 つまりは、恭子が糸をひいていたのではないのか。
 このまますべてを暴いては、穂希が傷付くことになりかねない。
 以前、恭子は爽歌との結婚を望んでいると聞いた。
 黙って出て行けば、彼は爽歌と結ばれ、ハッピーエンドだ。
< 141 / 206 >

この作品をシェア

pagetop