私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 爽歌が穂希に初めて出会ったのは三歳のときだった。
 彼はそのとき五歳。
 今でも覚えている。きらめく日差しよりも彼は輝いていた。
 一緒に遊んでくれて、爽歌が転ぶと抱き起してくれた。ときにはおぶってくれたりもした。
 頼もしくて優しくて、どんどん好きになった。

 小学校で彼が女子から攻撃を受けたとき、自分が守らなくては、と思った。
 自分が孤立したが、些細なことだった。
 中学校からは離れてしまった。自分は女子校、彼は男子校。
 同じ大学に行きたかったが、両親の強い希望で女子大学に進学した。
 いつか彼と結婚したいと憧れ、花嫁修業を続けていた。
 穂希は会うたびに心を閉ざし、冷たくなっていった。
 だが、彼の本心ではないことはわかっていた。
 穂希もまた、自分を守ろうとしてくれている。
 それがうれしかった。

 察した両親は彼の両親に縁談を申し込んだが、その時期ではないと断られ続けていた。
 そうして、今回の集団お見合いになった。
 だが、また呪いと思われるできごとが発生して一人ずつ脱落していった。
 呪いに負ける人は穂希の隣にいられないのだ、と思った。
 私は絶対に負けません。
 爽歌は心に誓う。
 穂希さんを守るのは、絶対に私。
 爽歌は目を細め、空を見上げた。
 空を、カラスが舞っていた。
 不吉とも神の使いとも言われるカラスが。
 穂希さんのお母様の黒髪のよう、と爽歌は思った。

***

 実家に帰った翌日、一鈴は宝来家の弁護士に呼び出された。
 びくびくしながら会いに行くと、弁護士は書類に署名するように言って来た。
「この書類には、解決金として六千万円を支払うことなどが書かれています」
 弁護士に言われ、一鈴は驚いた。金額が上がっている。
「いいんでしょうか」
 不安になって尋ねる。
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