私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 大切な友人——親友だから。
 そう思いながらなにげなくネットのニュースを見て、驚愕した。
「どういうことだ!」
 だん、と机を叩く。
 周囲の人間がびくっ穂希を見たが、それに気が付かない。
 ただ茫然とニュースを見る。
「失礼します。社長がお呼びです」
 声をかけてきたのは、社長である父の秘書を務める男性だった。
 穂希はスマホをポケットに入れ、席を立った。

 社長室に入ると、滉一は不機嫌に穂希を迎えた。
「ニュースは見たか」
「さきほど」
「お前の了解していることか」
「いいえ」
「ならばなぜこんなニュースが出た」
 滉一はノートパソコンをくるっとまわして穂希に見せる。

 宝来グループの御曹司、メガバンク頭取の娘と婚約! すでに同棲中!
 載っている写真は間違いなく穂希と爽歌だった。
「一条院氏に呼ばれている。準備しろ」
「はい」
 一鈴さんが見たらどう思うのか。爽歌は。
 誰がこんなガセネタを流したのか。
 これは一連の「呪い」に関連しているのか。
 穂希は怒りを宿して画面をにらみつけた。



 メガバンクの頭取であり爽歌の父である一条院正和は、料亭の個室で待ちかまえていた。
 爽歌も振袖姿で待っていた。幻の染めと言われる辻が花の振袖だった。牡丹色の地に華やかな花々があでやかに彼女を彩る。
 いつものように微笑を浮かべていたが、どことなく落ち着かない様子だった。
「ようこそ、とは言いかねますが」
 正和は怒りを抑えた様子で滉一と穂希を迎えた。
「お招きありがとうございます」
 滉一は慇懃に頭を下げ、穂希もそれにならう。
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