私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「ネットニュースが出ておりましてな。娘の名誉にかかわる。返答いかんでは、こちらも相応の対応をしなくてはなりません」
 二人が席につくなり、正和は言った。
「婚約のニュースでしたら、誤報です」
 穂希が言い、爽歌が顔を伏せた。

「世間はそうは思わないだろう。こうなったら結婚してもらうぞ」
「それはできません」
「穂希!」
 断る穂希を、滉一が咎めた。
「爽歌さんだってお嫌でしょう。気を使って屋敷に来てくれただけだ。この際だ、はっきり断ってください」
 爽歌はすがるように穂希を見てから、うつむいた。
「かまわないのです。穂希さんの助けになるのでしたら」
「爽歌さん」
 穂希は爽歌の友情に、申し訳なくなって拳を握りしめた。

 令嬢たちが屋敷に滞在しているのは極秘でもなかったが、芸能人でもないから、これまで記者にはりつかれたことはまったくなかった。
 それが、急にこのタイミングで記事が出た。
 これも呪いか、と思いかけ、一鈴の声が蘇る。
 誰かがやってるんですよ。
 そうだ。ネットニュースの記事を書くのも流すのも、人間がやることだ。
「食事の気分ではありませんな。また後日、今度は結納の日取りでも決めましょうか」
 正和が話をうちきったので、そこでお開きになった。



 父と同じ車に乗り、穂希は渋面を作ったまま窓の外を見ていた。
「さっきのあれはなんだ。失礼だろう」
 滉一にとがめられ、窓の外を見たまま答える。
「時代が違うんです、お互いの意志を尊重してもらわないと」
「爽歌さんは嫌がってなかったじゃないか」
「爽歌はなにごとも我慢する人だ。俺の呪いのせいで不幸にするなんてできない」
「まだ言っているのか。やっと部屋をかたづけたと聞いたが」
 滉一は呆れて穂希を見た。
 まだ言ってるんですか。
 呆れたような一鈴の声が耳に蘇る。
 人間くさい呪いですね。誰かがやってるんですよ。
 一鈴はそう言った。
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