私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 誰か、とは誰なのか。
 ずっと悪いことが起き続けて、子供心にあきらめていた。そのまま大人になっても呪いを受け入れてしまっていた。
 呪いを言い訳にしている、と一鈴に指摘されたこともあった。
 確かに、呪いのせいにすれば、あきらめる言い訳ができる。

 またあきらめるのか。
 子供時代のように。
 もう子供ではないというのに。
 呪いは人がかけるものだと、あのとき自分が答えたというのに。

 それなのに、心のどこかでまだ呪いだと思っていた。
 黒猫は不吉の象徴ではなく、幸運を招く猫。
 思い込みをほどいてくれた一鈴。
 俺に必要なのはお守りなんかじゃない。
 穂希は一鈴のペンダントを外し、ぎゅっと握りしめた。
 手の中から、ぱきん、と何かが割れる音がした。



「これ、あなたの元勤め先の人じゃない?」
 夕食後、一鈴は母に言われて、見せて来たスマホを覗き込んだ。
 宝来家の御曹司、結婚!
 文言とともに、彼と爽歌の写真が載っていた。
「御曹司は結婚すらニュースになるのね」
 言われて、一鈴は笑った。
「カテゴリが経済っておかしくない?」
「それだけ経済界に影響のあるニュースなのね」
「おっかしい! あ、お菓子食べたくなった。コンビニ行って来る」
 一鈴は上着をひっかけて急いで外に出た。

「姉ちゃん、なんかおかしくね?」
「ほうっておいてあげなさい」
 陽太の言葉に、母が返す。
「兄ちゃんデリカシーがないから」
 碧斗がつっこむ。
「うるせ」
「デリカシーってなに?」
 ひまりが倫子にたずねる。
 陽太は心配そうに一鈴が出て行った方をみつめた。
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