私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~



 連れて行かれたのは、立入禁止の穂希の部屋だった。
 彼は周囲を確認してから扉を開け、一鈴を押し込んで自分もさっと入る。
 部屋のありさまに一鈴は目を見開いた。

 正気か。
 最初の感想がそれだった。
 見渡す限りの開運厄除けグッズだった。

 机の上に三毛、黒、金の三種の招き猫。なぜか一体だけのシーサー。棚と言う棚には壺。壁にはいくつもの神棚とお札、破魔矢、八角形の鏡、大きな十字架にキリストの絵画。西には黄色の絵画。不似合いなスチール棚に鶴と亀の置物、日本刀。水晶玉、翡翠らしき龍。狸の置物。金色のう〇こなどなど。足の踏み場もなく埋め尽くされている。

「俺のあだ名を知っているか」
 髪をくしゃっとかき上げ、穂希は言った。
「知りません」
「呪われた御曹司だ」
 自分で言うか。
 一鈴は笑いかけ、咳をしてごまかした。

 隅に追いやられたソファを勧められ、座る。
 穂希は重役のようなデスクの椅子に座った。
 そういえば自分は仕事中だった。
「私、仕事が」
「多美子さんには言ってある」
 では、彼女は承知だったのだ。

「俺は結婚したくない。だから婚約者のフリをしてくれ」
「断ればいいじゃないですか」
「その結果、四人を屋敷に呼ばれた」
「なんでも屋とかに頼んでくださいよ」
「ただの女性じゃダメなんだ。俺は呪われてるから」
「呪いなんて信じてるんですか」
 あきれて言うと、彼はきりっと一鈴を見た。
「現代の科学で証明できないだけかもしれないじゃないか!」
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