私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 一鈴はコンビニには向かわず、とぼとぼと歩いた。
 家族と一緒に暮らせるのはうれしいし、幸せだ。
 だが、こういうときに一人になれないのはつらい。

「結婚、かあ」
 わかっていたことだ。
 一鈴が特別だ、みたいなことを言われたが、それはきっと穂希の錯覚だ。
 一鈴の名前がお守りみたいだから、今まで近くにいないタイプの人間だったから、気になっただけだ。
 ただのすりこみ効果だ。
「そばにいる大切な人を、大事にしたらいいんだ」
 女性を不幸にしたくないから結婚しないと言っていた穂希。
「いいじゃん、大凶ははずれじゃん」

 恭子はどう思っているのだろうか。爽歌ならいいのか。
 爽歌を突き落としたのは、彼女が気に入らなかったからなのか。彼女を被害者にして同情を集めるためなのか。
 穂希の連絡先は消してしまった。
 弁護士の名刺はもらってあるから、どうしてもの場合は弁護士を経由すれば連絡できないこともないだろう。
 そもそも、穂希は呪いを警戒している。事件があって、人間の警護も増えているようだった。

「私の出る幕はないか。穂希さんが守るでしょ」
 彼は爽歌が大切だと言っていたのだから。
 都合よく考え過ぎだろうか。
 最後に、爽歌さんを守ってくださいって言えばよかった。
 なのにあのとき、自分は穂希と離れることで頭がいっぱいで、それ以上のことを考えられなかった。
 一鈴は空を見上げた。
 澄んだ夜空に月が明るくて、星はかすんでいた。
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