私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
莉衣沙から連絡が来たのは翌日だった。
「ニュース見たわ! こっちに来て説明しなさい!」
「交通費がかかるから嫌です」
「穂希さんに車を出させなさいよ!」
「あの家はもう出たので」
へらっと笑って答えた。
「なによそれ!」
「収まるところに収まっただけでして」
「迎えを行かせるから来なさい」
莉衣沙はそう言って通話を切った。
「返事を聞かない人だな」
スマホを見て、一鈴は唖然とした。
一時間後には迎えの車が来て、一鈴はあきらめて家を出た。
リクシャスのLSだった。
高級だが国産車だったことに、なんだかホッとした。
ふと肘掛けを見ると、マッサージ機能のスイッチがあった。
これ、使ってもいいのかな。
どきどきするが、運転手にきくこともできなくて、我慢した。
莉衣沙の病室に入ると、佳乃もそこにいた。
「どうしてここに?」
「私が連絡したの」
莉衣沙は険しい顔で一鈴を見た。耳には、一鈴とコスモが作ったピアスをつけていた。
「これどういうこと?」
挨拶するより早く、タブレットでネットニュースを見せて莉衣沙が言う。
「あなたが婚約すると思ってましたわ」
佳乃が困惑している。
「見た通りですよ」
「なにか隠してるわよね。わかりやすすぎるわ」
あはは、と一鈴は笑った。
「ペンダント、してないのね」
めざとい、と一鈴は笑顔を硬直させた。
「呪いの噂が本当なら、爽歌さんはすごい呪われるわね」
莉衣沙が言い、一鈴は顔をひきつらせた。
「穂希さんが守りますよ」
「あの男にそんな甲斐性があるとは思えないけど」
莉衣沙はふん、と鼻を鳴らす。
「私、用事を思い出したので帰ります」
一鈴はさっと身をひるがえした。
「話は終わってないわよ!」
莉衣沙の声が追い掛けて来るが、聞こえないふりをした。