私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
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穂希はタブレットの通話を切ってため息をついた。
佳乃からリモート会議の連絡がきたと思ったら莉衣沙の病室からで、二人から婚約のニュースについての意見——実質の文句を言われた。
一鈴さんと婚約すると思ったのに、どういうことですか。
一鈴さんを捨てたの?
さんざんな言われようだった。
一鈴の名誉のためにも「調査中だ」で乗り切った。二人は納得しなかったが、穂希が無表情で会話を切るように答えていたのでさすがに諦めたようだった。
「あの二人が一緒にいるとは」
穂希は驚いた。
莉衣沙は周りに攻撃的だったし、佳乃は見下したように眺めて無言だった。とうてい仲良くなるようには見えなかった。
「これも一鈴さんの影響か」
ふと、机の上の置物が目に入った。
シーサーは険しい顔で口を閉じ、黒い招き猫はにやにやと笑っていた。
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一鈴は近所のファミレスにバイトに出た。
面接はあっさり合格し、翌日には出勤した。
働いている間は余計なことを考えずにすむから楽だった。
仕事を終えて帰ると、陽太がしかめっつらで出迎えた。
「ねえちゃん、無理するなよ」
「大丈夫よ。ごはんは?」
「母ちゃんが作ってくれて食べた。ねえちゃんの分もあるよ」
「じゃあいただく」
上着を脱いだ拍子にポケットからスマホが落ちた。
陽太がそれを拾い、画面を見て首をかしげる。ダークグレーの平たい車が壁紙だった。
「見ないでよ!」
「なんていう車?」
「知らない。珍しいから写真をとっただけ」
「ふうん」
陽太は不審な目で見るが、それ以上はなにも言わなかった。