私はお守りじゃありません！ ～現代の大奥で婚約バトル！？ 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます～

　まだしてない。
　これからするっていう言葉に聞こえる。
「私は好きじゃないです」
　一鈴が言うと、穂希は少し体を離して彼女を見た。
「お金はお返します。庶民がいきなり大金を持つって、居心地悪いですね」
　へらへらと笑う。

「いつも笑って気持ちをごまかして。今もそうだ」
「笑うのは癖です」
　穂希はへらへら笑う一鈴を見て、それから彼女の後頭部に手をまわす。
　なにを、思ったときにはもう唇を奪われていた。
　ぎゅっと押しつけられた唇は温かくてやわらかかった。
　穂希はすぐに唇を離してまた一鈴を見た。

「ひどい」
　一鈴の目から涙がこぼれた。
　穂希はまたぎゅっと一鈴を抱きしめる。
「離して！」
「嫌だ」
　一鈴はもがくが、穂希の力は強くて離れない。
「お前、なにしてる！」
　道路から声がとんできた。

「陽太」
　見ると、陽太が立っていた。碧斗とひまりもいる。
　穂希は黙って一鈴を離した。
　一鈴は陽太に駆け寄る。
「なんでもないの、帰りましょう」
「お姉ちゃん、泣いてる？」
　ひまりが心配そうにたずねる。
「目にゴミが入っただけ」
　一鈴が微笑むの見て、陽太はため息をついた。
　また無理をしている。
　陽太は駐車場に止まったダークグレーのスーパーカーを見て驚き、穂希をにらんだ。