私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「え?」
「私も呼ばれましたの」
 佳乃が目礼すると、女性は一礼して去った。
 中に入ると、莉衣沙がソファに座っていた。近くには車椅子があり、ホテルの従業員が控えていた。
 従業員は三人分のコーヒーを淹れて出て行った。
 テーブルにはお茶菓子があった。華やかなマカロンに、金粉の載ったチョコレート。フィナンシェ、一口サイズのどら焼き、栗の茶巾絞り。

「退院おめでとうございます」
「ありがとう。本当はいつでも退院できたんだけどね」
「え?」
「帰っても暇だし、入院だと同情してもらえるもの。ちなみに退院の許可が出てから残ってた間は保険は使わなかったわよ」
 一鈴はあきれた。あんな特別室、費用がすごそうだ。

「退院祝いです」
 一鈴はラッピングされた袋を差し出した。
 莉衣沙はすぐに開けて、目を輝かせた。
「かわいい!」
 カラフルなフルーツを塩でコーティングしたもので、華やかだった。
「私からもプレゼントよ」
 莉衣沙が小さな包みを一鈴に渡した。
 受け取ってどきどきする。前はいたずらされたが、今度もどうだろうか。

 開けてみると、中にはスズメのピアスがあった。
「子供っぽいかなと思ったけど、かわいくて。調べてみたらスズメって縁起物なのね。厄をついばむんだって」
 穂希が聞いたらまたなにか言いそうだな、と思いながら一鈴は聞いた。

「コスモさんに名前にちなんでピアスあげたから、あなたもって思ったんだけど、スズメを見たときにこれだ! って思って」
 一鈴はさっそくピアスをつけてみた。
「似合うわよ」
「似合ってますわ」
 一鈴は照れて、えへへ、と笑った。
「今度はあなたがいろいろ話す番よ」
 莉衣沙の気迫に、一鈴はたじろいだ。
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