私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「あなたのおかげよ」
「あなたのおかげですわ」
 二人は一鈴を見て言った。
「……ありがとうございます」
 一鈴は目が潤んでしまって、顔を伏せた。
「だから、あなたの力にならせて」
「そうよ」
 一鈴の胸にせりあがるものがあった。ぽたぽたと雫が落ちる。

「もう、充分です」
 一鈴はそれ以上、なにも言葉にできなかった。
 穂希とは離れてしまった。
 だが、彼のおかげで、こんなにすばらしい人たちに巡り合えた。
 それだけでいい。
 一鈴の胸はいっぱいで、あふれるものを止められなかった。

***

 一鈴が落ち着くのを待って、莉衣沙と佳乃は別の話題をふって楽しくすごした。
 部屋を出る一鈴を見送ってから、二人は顔を見合わせる。
「どうにかしてあげたいですわね」
「あれからまた穂希さんを問い詰めたけど、かわされたわ。無表情のときは冷徹モードだから無理」
「私も連絡しました。同じことしてますのね」

「爽歌さんには?」
「踏みこんだことは聞けませんでしたわ。穂希さんは一鈴さんが好きなはず、なんて言えませんもの。ただ、一鈴さんを怖がってましたわ」
「一鈴さんが突き落としたと思ってるのね」
 莉衣沙はため息をついた。
 佳乃はふふっと笑った。
「私たちが協力するなんて、以前は思いもしませんでしたわ」
 全員がぎすぎすしていて、会話もなかった。

「コスモさんはまだ意識不明なのですよね」
「そう聞いてるわ」
「彼女がこの婚約を知ったらどう思うのかしら」
「きっと誰よりも怒ったわ」
 早く治りなさいよ、と莉衣沙は思う。一緒にあいつに文句を言うんだから。だから、早く。
 莉衣沙は小さくため息をついた。
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