私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
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「ねえちゃん、また変だな」
碧斗と陽太は二人でひそひそと話し合う。
仕事が休みの今日は友達に会うと聞いていた。
二人が学校から帰ったら一鈴も帰宅して、ぼうっとテレビを見ていた。ひまりが話し掛けても上の空だ。
「あの男、絶対に殴ってやる」
陽太は拳を握りしめ、一鈴の背に誓った。
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一鈴はぼうっとしていた。
テレビを見ているようで、見ていない。
考えないようにしてたのに、莉衣沙たちに会ったことで、どうしようもなく穂希を思い出してしまう。
好きだ、と言われた。キスまでされた。初めてのキスだった。
ふと、メイド募集を見る直前に、スズメが足元にいたことを思い出した。
あのとき自分は、地に足をつけて、と思っていた。
五千万を手に入れたくて、自分は地面から足を離してしまっていたのだ。空など飛べないというのに。
気がつくとドラマが始まっていた。よくある刑事ドラマだった。
二人組の刑事が、現実にはない荒っぽい捜査をしていた。
被害者の部屋のコンセントタップに盗聴器が仕込まれていた、と主人公は言った。
あれ? と一鈴は記憶をたどる。
穂希の部屋にやたらとコンセントタップがあった。
急に落ち着かなくなった。
ドラマでは謎が謎を呼び、捜査が難航していた。
「一番得をしたのは誰かということですよ」
主人公が言う。
一鈴は眉を寄せた。
佳乃とコスモは婚約を避けたかった。だから一鈴を排除する必要はなかった。
莉衣沙は自分が選ばれることにこだわっていて、本当に結婚したかったわけではない。
恭子は、得をしたのだろうか。
爽歌は。
思って、どきっとする。
爽歌は穂希のことが好きだ。
彼と婚約して、彼女は得をしたと言えるのではないか。
だが、彼女は正々堂々としたい、と宣言していた。
「人は嘘をつく生き物ですよ」
ドラマの主人公がしたり顔で相棒の刑事に言う。