私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~



 穂希が再び現れたのは翌日だった。
 ファミレスのバックルームから出て、駐車場のその車にすぐに気が付いた。
 すでに車外にいた穂希に進路をふさがれ、逃げられなかった。
「お客様以外の駐車は禁止です」
 一鈴は先制するべく、そう言った。

 穂希はかまわず、ポケットから一鈴が作ったペンダントを取り出し、見せた。鏡の部分が割れていた。
「直してくれないか」
「壊れたってことは、役目を終えたってことです」
「チェーンもからまってしまって」
「ベビーパウダーをつけてゆっくりほぐすといいらしいですよ」
 穂希はため息をついてペンダントをポケットに戻した。

「俺は君と離れるのがつらい」
 一鈴はへらっと笑った。
「ダメですよ、そういう言い方は」
「君は平気なのか」
「はい」
 一鈴はまた、へらっと笑った。
「そういう笑い方をしているときは本心を隠しているときだ」
 まただ。一鈴は頬をゆがめた。
 また、穂希は一鈴を理解してくれた。それがうれしくて、切ない。

「和久保玉江は爽歌の実家に雇われた。脅されたかわいそうな彼女に爽歌が同情したそうだ」
 一鈴は穂希を見た。
「不自然だ。普通は雇わないし、雇いたいという申し出があっても断るんじゃないのか」
「普通じゃないんでしょう」
「どう普通じゃないんだ? 最初からそう決まっていたとか?」
「そんな言い方」
 まるで、爽歌を疑っているみたいだ。
 昨日の恐怖を思い出し、一鈴は穂希を見つめた。彼は無表情で、内心を読み取らせない。
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