私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「子供の頃は俺の悪口を言った男子も呪われた。それがピタっとやんだのは男子校に入ってから。つまり爽歌と離れてから」
 胸がざわざわした。このまま彼に語らせていいのか。大切な人を、そう言わせていいのか。
「和久保玉江は君と背丈が同じくらいだ。雇われて数年、メイド服の保管場所も鍵の場所も知っている」
「でも」
 それだけでは説明できないこともある。

「ケーキの針は、本人が隙を見て入れたと考えるほうが自然だ」
 着物のたもとなら針を持った手元を隠すのは簡単だろう。
「コンセントタップには盗聴器が仕込まれていた。メイドなら隙を見て持ち込める」
「だけど」
「俺が君と神社に行ったとき、爽歌が現れた。たまたまか?」
「部下の女性の件は」
「仕事の電話を部屋で受けることもある。盗聴で知ったのか。君の担当メイドなら、君がでかけることも知っている」
 穂希は一鈴にかまわず続ける。

「倉持さんを襲うのはタイミングを見ていただろう。君という、罪をなすりつけるのにちょうどいい人物が現れたから実行した」
「滑り台から落ちて骨折したって」
「死ぬほどの被害を受けたわけじゃない」
「一歩間違えれば死んでたのに?」
「ほかの人も同じだ。君だって危なかった。自転車も細工されていたんだろう?」
「スポークに不自然な傷がありました」
 爽歌のぞうりのひもの細工も本人ならば容易だ。

 穏やかに微笑をたたえていた爽歌。親しみを見せた爽歌。ケーキの中の針に怯えた爽歌。
 彼女の姿が頭の中にぐるぐると回る。
 本当に爽歌なのか。
 確かめるにはどうしたらいいのか。
「君は俺が犯人と結婚してもいいのか」
 一鈴は顔をこわばらせた。
 犯人、と穂希は言った。
< 167 / 206 >

この作品をシェア

pagetop