私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「それより、これでクビ切られたらどうしてくれるんですか!?」
「だから婚約してくれ。一カ月後に解消する。それで一千万だ」

「ここで稼ぐはずの金額に足りないです」
「なら、五千万。奨学金を返せるし、弟さんの学費にもなる」
 ぴく、と一鈴の頬が動いた。穂希はにやりと笑う。

「君のことは調べた。高給で再就職を世話しよう」
「高給とは」
「三十万くらいかな」
「仕事内容は?」
「それは……これからだ」
 うーん、と一鈴は穂希を見る。

 五千万もらって月給三十万のほうが得のように思える。
「婚約解消のあとで解決金として渡せば贈与税はかからない。慰謝料の名目は勘弁してくれ、こちらも体面がある」

「なんで私なんですか」
「名前だ」
 穂希は断言した。 
「たまたま履歴書を見て、君だ、と直感した。だから合格させた。苗字に九つの守り、なおかつ下の名は五十の鈴と書く五十鈴にちなんでいるのだろう? なんてありがたい名前なんだ。しかも誕生日は八月八日の末広がり」

 一鈴はどんびきした。
「私はお守りじゃありません。騙されやすそうですね」
「悪い気を吸う壺を買ったこともあった。効かなかったというと、もっと効果があるからと高い壺を買わされた。三度目には、その自称霊能者をつぶしてやった」
 あっさりすごいこと言うな、と穂希を見る。

「二回は騙されたんですね」
「必死だったんだ!」
「でもやっぱりお札は買うんですね」
「藁をもすがるんだ」
「ついでにイワシの頭を飾ったら」
「節分には飾っている」

 皮肉のつもりだったのに。
 一鈴は笑いをこらえて頬をひきつらせた。
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