私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~



 穂希の愛人として屋敷に戻ってから二週間が過ぎ、一鈴は落ち着かない気持ちで毎日を過ごしていた。
 事情を知らない恭子はショックで寝込んだという。
 今のところ「呪い」は一鈴を襲って来ない。
 それが不気味だった。
 本当に爽歌が犯人なのだろうか。自分たちの見込み違いだったのでは。
 そんなことが頭をよぎるが、穂希は相変わらず一鈴と人前でいちゃつこうとする。

「なにも起きないのに続ける意味あるんですか?」
「続けなければ挑発の意味がない。むこうだって君が来てすぐに行動したのでは正体がバレると警戒しているだろう」
「でも、お母様が寝込んでらっしゃるときに」
「いいんだ」
 母にはすべて終わってから説明する予定だ、と前に言っていた。父にはもうあらかたのことを言ってある、とも。

「近々、前に言っていた遊覧飛行の開会式がある。君にも来てもらうからな」
「私なんかが、いいんですか?」
「倉持さんも嶌崎さんも来る。気晴らしになるだろう」
 穂希は微笑する。が、どことなく暗かった。
 隠してはいても穂希も苦しいのだ。悟って、胸が痛くなる。
「楽しみにしてますね」
 一鈴は精一杯の笑顔で返した。



 穂希のいない昼間は厩舎に通った。厩務員に習ってコスモの馬の世話をする。
 最初、馬になにかするのではと疑われた。が、一鈴が真面目に世話をしているのを見て、すぐに疑いは晴れた。
 コスモはまだ意識を取り戻さないという。
「あなたも寂しいよね」
 ミーティア号は黙って一鈴を見るだけで、なにも語らない。
「コスモさんが早く元気になって、すべて解決しますように」
 一鈴はミーティアによりかかる。
 と、ミーティアは嫌がって離れた。
「あ、冷たい」
 一鈴はがっかりと肩を落とした。
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